伝えようという気持ちをもって、ブログで文章を書いていると、もっと適切な言葉がないかしらんと思うことがある。
今回は、そういうときに便利な辞典を紹介しよう。
シソーラスというタイプの辞典だ。
シソーラスは、単なる類語を集めたものではなく、単語を分類し、体系づけて配列したものだ。
たとえば、ぼくが愛用している角川書店の『類語国語辞典』も、そのタイプのもの。
自然、天文、歴日、気象、地勢、性状、位置、形状、数量、実質…………と「語彙分類体系表」があって、その体系にしたがって言葉が並んでいる。
たとえば、「繰り広げられている分析は刺激的で」と書いた少し後に、
「刺激的な議論が展開する」と書いてしまったりする。推敲していると、そういうことを見つけたりする。
「刺激的」という言葉が続くのは不粋だと思えば、すぐこの辞書をひく。索引で「刺激」を引くと、140,408,491aの項目だと分かる。
140を見る。「刺激」という項目で、その中に「刺激」「明暗」「風味」「匂い」「痛痒」などの項目があり、それぞれの項目に語彙が分類されて並んでいる。
408は、「痛み」の項目で、その中に「刺激」が出てくる。前後に「差し込み」「ひりつく」「沁みる」「疼痛」「鎮痛」などの言葉が並ぶ。
491は「感動」の項目。その中の「刺激」の前後には、「エキサイト」「興奮」「激発」「熱狂」などの言葉が並ぶ。
辞書を引くと、その言葉が「語彙分類体系表」でどの位置にあるか解る。
引いた言葉の類語が並んでいるタイプの類語辞典だと「刺激」の類語が並んでいるだけだが、シソーラスだと、隣の項目も近い関係の言葉なのがいい。
たとえば、491の「感動」の項目の前後は、「感情」「苦楽」「悲喜」の項だ。そして、さらに前後を見ると、「威嚇」「驚き」「人情」などの項がある。前後を見ることによって、その言葉のひろがりを感じることができる。
言葉を類語に置き換えるのじゃなくて、もう少し別の文脈を検討する材料になる。
「中心」を引くと、「真ん中」「中程」「中央」といった類語はもちろんだが、「端」「先」「間」「隅」といった項目が目に入る。さらにページをめくっていけば、「底」「奥」「入り口」「上下」「前後左右」「内外」と、どんどん言葉が拡がっていく。本来の目的を忘れて、ついつい見てしまうこともある。
言葉が重なって不粋だなと思って、あれこれ悩むときに、その言葉だけを単純に別の言い方に直せばすむ場合は少ない。不粋になってるときは、表現の順番や、表現する角度が、もうちょっと上手くいってないのだ。だから、単純な類語を探すより、その言葉から連想される言葉を広い範囲で見ながら、言葉だけじゃなくて、表現する文章全体を考え直してみたほうがいい。
そのきっかけにシソーラス辞典は、けっこう役に立ちます。
お題5
知人から聞いた話。
美容院で「白髪(しらが)がすごいでしょー。後頭部はどうなってます?」と聞いた。
すると、
「グレイヘア、後ろはほとんどないですね」
とか、
「まだモミアゲにグレイヘアが出てないから大丈夫です」
といった答えが返ってくる。
白髪と言うと怒る人がいるので、その美容院では、グレイヘアと言うのだそうだ。
客商売は、たいへんだ。
白髪は、気遣い言い換えフレーズで「グレイヘア」って言うのだ!
「だけど、言い換えられないものもあって……」
と美容院のおにーさん。
「禿はちょっと……」
「ああ、どうしてるの?」
「うーん、とりあえず『脱毛の箇所』って小声で……」
「それ、よけいに傷つかないかな?」
「そうなんですよねえ……」
薄毛、禿はもちろん、
若年男子でも円形脱毛症が多いらしい。
だが、なんと言えばいいのか。気遣い言い換えフレーズが見つからない。
うまい言い換え語を探してるらしいが、どうも良い気遣い言い換えフレーズが見つからないらしい。
そこで、今回のお題は、「ハゲ」の気遣いフレーズを考えてほしい。